痴漢で現行犯逮捕されたらどうなる?逮捕後の流れ
性犯罪に関する事件は、報道などにてセンセーショナルに報道されがちです。
最近では、電車内での痴漢のニュースを目にすることも多くなりました。
では、痴漢が原因で逮捕された後は、どのように手続きが進んでいくのでしょうか?
今回は、痴漢で逮捕されるケースや、現行犯逮捕された後の流れ、痴漢の刑罰についてわかりやすくご説明します。
このコラムの目次
1.痴漢を規制する法律
まず、痴漢を規制する法律についてご説明します。
(1) 痴漢のほとんどは迷惑行為防止条例違反
痴漢事件といっても痴漢罪が存在するわけではなく、ほとんどの痴漢事件は迷惑行為防止条例違反によって規制されています。
迷惑行為防止条例違反は、各都道府県の条例により規制されています。千葉県条例は以下の通りです。
「何人も、女子に対し、公共の場所又は公共の乗物において、女子を著しくしゆう恥させ、又は女子に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。男子に対するこれらの行為も、同様とする。」(3条2項)
これに反した場合には「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金」が課されます。
また、常習の場合は「一年以下の懲役又は百万円以下の罰金」です。
(2) 「強制わいせつ罪」に当たる可能性
痴漢を規制する法律としては、刑法上の罪である強制わいせつ罪も適用されることがあります。
強制わいせつ罪で逮捕されると「6ヶ月以上19年以下の懲役(刑法176条)」に処される可能性があります。
強制わいせつ罪が適用されるのは、下着の中まで手を入れて直接身体を触った場合です。
もっとも、行為態様が悪質と判断された場合には、服の上から触った場合であったとしても、強制わいせつ罪が適用されることもあります。
例えば、被害者が痴漢行為に気づき場所を移動したが、執拗につきまとい、痴漢行為を続けた場合などです。
2.痴漢で逮捕される場合
(1) 現行犯逮捕
現行犯逮捕という言葉は聞いたことがある方は多いと思われます。しかし、実際にどのようなケースを現行犯逮捕というのかを詳しく理解している方は少ないかもしれません。
現行犯逮捕とは「現に罪を行っている者」を逮捕するケースを指します。痴漢事件で考えてみると、電車や駅のホームなどでまさに誰かが勝手に他人の身体を触っているのを発見した場合に、逮捕するということです。
これに対し、準現行犯逮捕と呼ばれるものもあります。
準現行犯逮捕とは、「現に罪を行い終わった者」を逮捕するケースを指します。痴漢行為後に被害者に気づかれ逃げている場合に逮捕することなどを指します。
現行犯、準現行犯、どちらであっても一般人にも行うことが可能です。
(2) 後日逮捕(通常逮捕)
犯行中や犯行が終わった直後に捕まるケースもありますが、犯行から逃げ切って数日経って捕まってしまうケースもあります。
これを後日逮捕といい、この場合は警察官による通常逮捕が行われます。後日逮捕の場合は一般人による逮捕はできず、きちんとした捜査を行い、証拠に基づいて裁判官による逮捕状が発行されたあとに、家などに警察官が逮捕目的で訪れます。
後日逮捕が行われるのは、証拠から犯人を割り出せたケースです。
例えば、目撃証言や被害者の供述から、犯人が発覚することもあります。これ以外でも、防犯カメラの映像、SUICAなどのICカードからの情報、被害者の爪に付着したDNAなどが証拠になります。
痴漢事件においては、現行犯逮捕が非常に多いといわれています。しかし、捜査の行く末によっては、後日逮捕が行われる可能性も十分にあるのです。
このように、痴漢事件では犯行中、犯行直後に現行犯逮捕されるケースがほとんどですが、稀に後日逮捕もありうるため、逃げ切ったとしても罪を問われる可能性は残ります。
3.逮捕後の流れ(現行犯逮捕・後日逮捕)
現行犯逮捕・後日逮捕された場合は、その後警察署に連れて行かれるでしょう。
警察署では犯行内容などについて、捜査官に詳しく話を聞かれることになります。逮捕から48時間以内に検察へ送致され、検察送致から24時間以内に勾留請求を行うかどうかが決定されます。
勾留とは、罪証隠滅や逃亡の可能性がある場合に身柄を警察署内に拘束することです。この間に取り調べなど継続しても行われます。
裁判官が、勾留が必要という決定を下したら、その後、原則として10日間は留置場から出ることはできません。やむを得ない事情がある場合は、最大で10日の延長が行われるでしょう。
勾留中に検察官による起訴・不起訴が決定し、およそ1ヶ月程度で裁判へと続きます。
起訴が決定したあと、保釈(金銭の納付などを条件に身体の拘束を解く制度)の請求はできますが、保釈が許されず勾留が続くこともあります。
この場合、起訴決定から裁判までの間も家に帰ることはできません。
裁判で有罪となれば、執行猶予判決でも前科がつくことになります。
なお、痴漢ならば略式起訴で罰金刑となる場合も多いですが、この場合でも前科はつきます。
4.痴漢事件で勾留・起訴されない場合
(1) 勾留されない場合
痴漢事件の場合、勾留されずに釈放されることが多いでしょう。
特に、初犯で罪を真摯に認めている場合や、証拠が揃っている場合、逮捕から勾留請求までの間に被害者との示談が成立している場合です。
このようなケースでは、勾留の必要性はないと判断されることが多く、逮捕後3日以内に釈放されます。
もっとも、痴漢事件だから必ず釈放されるというわけではありません。証拠はあるのに否認を続ける場合、あるいは黙秘している場合は、逃亡の恐れや証拠隠滅のおそれがあるとして勾留請求が行われる可能性もあります。
そのため、事件を起こした場合には、真摯に反省して取り調べに素直に応じることも大切です。
(2) 不起訴となる場合
実際に勾留がなかったとしても、事件はそのまま収束するわけではありません。家に帰れたとしても、検察官の起訴・不起訴の判断がでるまでは安心できないのです。
というのも、起訴された場合には前科が付く可能性が高くなるからです。
しかし、起訴は常に行われるわけではありません。例えば、初犯の場合、被害者との示談が成立している場合であれば、不起訴となる可能性は高いでしょう。
一方、犯行態様が執拗で悪質と判断された場合や何度も事件を起こしている場合、被害者が「絶対に許さない、厳罰を求める」とする意思を表明している場合などは、すべての事情を考慮して検察官が起訴に踏み切る場合もあります。
このように、痴漢事件では不起訴となるケースもありますが、場合によっては起訴が行われる可能性もあるため、事前にしっかりと弁護活動を行うことが大切です。
5.痴漢事件で現行犯逮捕されたら、すぐに弁護士にご依頼を
ご説明した通り、逮捕から勾留請求までは3日間しか時間がありません。この間に被害者と連絡を取り、示談を行うなどの弁護活動を行うことで、勾留を回避でき、釈放の可能性も高くなります。
もし、ご家族が現行犯逮捕された場合はすぐに弁護士にご相談ください。また、まだ逮捕されていない場合でも、できるだけ早い段階で弁護士とともに対処していくことが大切です。
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