盗撮で前科がつくのはどんなケースなのか?
盗撮で逮捕されてしまった場合、今後どのように捜査が進み、裁判ではどのような結果となってしまうのか、不安になると思います。
仮に有罪となってしまうと、罰金刑でも前科がついてしまいますので、不起訴を目指しできる限り早めに弁護活動を進めたいところです。
そこで今回は、盗撮で前科がつくのはどのようなケースか、盗撮の罪名と罰則、示談にどのような効果があるのかについてわかりやすくご説明します。
このコラムの目次
1.盗撮で前科がつくケース
「前科がつくのは裁判で有罪となった場合」と考えている方が多いと思います。
これ自体の考えは正しいのですが、有罪=懲役刑と考えている方は間違いです。
というのも、罰金刑、懲役刑、執行猶予懲役刑のすべてが有罪となるためです。
罰金刑や執行猶予付き判決でも有罪であることは変わらず、前科はついてしまうため、前科を回避するためには「不起訴」か「無罪」が必要といえます。
これを前提に、盗撮で前科がつくケースを見ていきましょう。
(1) 悪質な犯行の場合
盗撮に関しては、初犯で有罪判決となるケースは稀といえます。
そのため、今回が初犯の方は、しっかりと弁護活動を行えば、不起訴の可能性も大きいといえるでしょう。
もっとも、初犯の場合でも「悪質な犯行」と捉えられた場合には、起訴が行われる可能性もあります。
例えば、スマホで盗撮したというケースではなく、盗撮専用の機械を用いて犯行に及んだ場合などです。
また動画で長時間にわたり撮影する、それをネットなどにアップロードした場合には悪質と捉えられる可能性があります。
ネットに公開した場合には、被害は甚大となるため、起訴される可能性も高くなります。
(2) 常習的な場合や余罪がある場合
前科がつく可能性があるのは、行為態様が悪質な場合だけではありません。
常習的な場合や余罪がある場合にも、起訴が行われ前科がつく可能性があります。
初犯ではない場合は、反省が見られないとして、前回不起訴だったのが罰金・懲役などの可能性が高まります。
また、盗撮以外にも、痴漢の前科がある場合などはこれも考慮されることになるでしょう。
以上から、悪質な犯行や常習生がある場合、余罪がある場合には、残念ながら起訴の可能性は高くなり、前科がつきやすいケースとなります。
もっとも、被害者との示談があれば不起訴に持ち込める可能性も十分にあります。
2.盗撮で問われる罪
次に、盗撮でどのような罪に問われるのかを理解しておきましょう。
盗撮で逮捕される可能性がある罪名としては、いわゆる迷惑行為防止条例違反、軽犯罪法違反、住居侵入罪などが考えられます。
(1) 千葉県迷惑行為防止条例違反
まず、盗撮行為で逮捕されるケースで一番多いのが「迷惑行為防止条例違反」です。各都道府県で定めた条例により罰せられます。
千葉県では、迷惑防止条例3条2項により「何人も、女子に対し、公共の場所又は公共の乗物において、女子を著しくしゆう恥させ、又は女子に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。男子に対するこれらの行為も、同様とする。」と規定されており、これに反した場合には「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金」が課されます。
また、常習の場合は「一年以下の懲役又は百万円以下の罰金」です。
千葉県では盗撮に関する条例がなく、痴漢と同様の条文で逮捕されます。東京都や大阪府など他の都道府県では盗撮を特に対象とした条例が制定されているのですが、千葉県ではまだ設置されていません。
他の都道府県では盗撮は「一年以下または百万円以下の罰金」と規定されていることが多いです。
この条例が適用されるのは、「公共の場所と乗り物」で犯行が行われた場合です。駅のホームや道路、公園、電車やバスなどを想定しています。
また、カメラを差し向けるだけで盗撮とみなされるという点を理解しておきましょう。
(2) 軽犯罪法違反
次に問題となりうるのは、「軽犯罪法違反」です。
軽犯罪法では、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者(1条23号)」を拘留又は科料の刑に処しています。
条文の通り、人の住居、お風呂、学校や銭湯などの更衣室、トイレなどの場所を盗撮した場合に罪に問われます。
拘留とは、1日以上30日未満の間刑事施設に拘束されることを指し、科料とは1,000円以上1万円未満の支払いを指します。
盗撮行為の場所によっては、軽犯罪法違反に問われることもあります。
性風俗店などで盗撮を行う方がいますが、これもお店や相手の許可がない場合には盗撮にあたり、軽犯罪法で処罰の可能性があると理解しておきましょう。
(3) 住居/建造物侵入罪
最後に、住居/建造物侵入罪です。刑法130条には「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」と規定されています。
簡単に説明すると、人の許可なく他人の住居などに入った場合には3年以下の懲役又は10万円以下の罰金が科されますよということです。
人の家に侵入して盗撮機器を取り付けたようなケースや、商業施設のトイレで盗撮行為を行った場合などに適用される可能性があります。
このように、盗撮といっても盗撮罪があるわけではなく、いくつかの罪に該当する可能性があります。
場合によっては、複数の罪が科されるケースもあり、罪によって罰則の重さも異なるため、どのような罪名で逮捕されたのかを確認しましょう。
3.盗撮で前科をつけないための示談の重要性
盗撮で前科をつけないためには、「示談」が有効です。
最後に、示談がなぜ重要なのかをお話しします。
(1) 早期釈放、不起訴、量刑が軽くなる可能性
示談とは、当事者間において和解の性質を持つ話し合いであり、当該事件において当事者間で解決することを目的に行われます。
示談では、加害者は被害者に対し相当の賠償金を支払うことで合意によって解決することになります。
示談があるかどうか、起訴・不起訴の決定だけでなく、その前の勾留請求や、裁判で量刑を決める際にも考慮されることになります。
示談成立は加害者にとって有利に働き、早期釈放や不起訴、量刑の軽減などの可能性が高まるという効果があります。
警察や検察としては、示談が成立している場合には当事者間での解決が済んでいると捉えるため、それを刑事事件においても考慮すべきと考えます。
示談書では、被害者が刑事処罰を求めないとする文言を加えることで、これを起訴・不起訴の決定に反映してもらえる可能性も高くなります。
(2) 示談金以上にお金を支払うことはなくなる
示談金では、相当額の賠償金を支払うことになります。
盗撮事件では、相場としては10万円〜30万円程度となりますが、悪質な盗撮であった場合にはこれ以上の金額を求められることもあるでしょう。
仮に示談をしなかった場合には、刑事裁判だけでなく、民事で損害賠償を請求される可能性があります。
裁判になると示談時の金額よりも大きくなることが予想されるため、できるだけ早期に示談をまとめておくのが賢明です。
示談が成立すれば、民事で損害賠償請求を受けることはなくなります。
また、示談金を被害者に支払いたくても受け取ってもらえないケースもあります。
この場合は、贖罪寄付を行うことが可能です。
贖罪寄付とは、慈善団体にお金を寄付することを指します。寄付を行うことで、当該事件と被害者に対し反省と謝罪の内容を示すことができるため、起訴・不起訴の判断や裁判の量刑にも効果があります。
このように、盗撮事件において被害者と示談をまとめることは非常に重要です。
示談で必ず量刑が軽くなる、不起訴になるとはいえませんが、その可能性は高くなります。
4.盗撮事件は、弁護士にご相談ください
盗撮事件を起こしてしまった場合、前科を避けるためには不起訴に持ち込むのが一番です。
不起訴にするためには、示談成立が一番有効と考えられます。そのため、できるだけ早い段階でご依頼いただき、弁護活動を早期に開始することが大切です。
泉総合法律事務所は、盗撮事件などの性犯罪事件も多く取り扱っており、その多くを早期解決に導いています。
被害者感情にも配慮しながらスムーズに示談を成立させるよう尽力しております。
盗撮の示談交渉は、実績と経験のある弁護士にお任せください。
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