むち打ちの症状固定はいつ頃になるのか?
交通事故でむち打ちの怪我を負う方は、非常に多いと言われています。
むち打ちは軽い怪我と思われがちですが、場合によっては半年以上も痛みが続くことがあります。まだ痛みが続く中、加害者側の保険会社から治療費の打切りを打診されてしまうこともあるようです。
今回は、むち打ちの治療期間や症状固定時期、打ち切りを打診された場合の対応策、その後に続く後遺障害等級認定についてまで、網羅的にご説明します。
このコラムの目次
1.むち打ちの症状固定までの期間
(1) そもそもむち打ちとは
むち打ちとは、交通事故の強い衝撃が首にかかることで首の神経や筋肉を傷めてしまう怪我のことです。
多くは追突事故による怪我であり、追突時に大きく首がしなることにより頸部を損傷してしまいます。
病院では、頚椎捻挫、外傷性頚部症候群という診断名となるのが一般的です。
むち打ちは、事故時に発覚しないことも少なくありません。事故直後は、事故によるショックで痛みなどが麻痺してしまうため、家に帰ってから「なんとなく首が痛い…」と感じて、徐々に痛みや違和感が強くなるケースも多いと言われています。
症状としては、首や肩の痛み・しびれなどの代表的なものだけではなく、頭痛やめまい、不眠、倦怠感などさまざまです。肩や首だけではなく、腕や指に痛みを感じることもあります。
(2) むち打ちの治療期間
では、一般的にむち打ちの治療期間はどれくらいなのでしょうか?
多くのむち打ち症は、3~6ヶ月程度で完治するといわれています。
もっとも、個人差も大きく、これより短い期間で完治した方もいれば、半年以上かかった方もいらっしゃいます。
ひどいケースでは、半年以上痛みが続き、最終的に完治せず後遺症として残ってしまう方もいらっしゃいます。
3~6ヶ月は一般的な目安とはなりますが、痛みが続く場合は通院を継続されるのが賢明です。
途中で治療をやめてしまうと「完治したもの」と勘違いされてしまい、治療費を十分に受け取れなくなる、後遺障害等級認定を申請できたケースであるのにできなくなってしまうなどの問題が発生します。
以上から、痛みなどの症状が続く場合は、きちんと通院を継続することが大切です。
2.むち打ちの治療費打ち切りについて
むち打ちで治療を続けていると、「そろそろ治療費を打ち切ります」などと保険会社から通告されてしまうことがあります。
これはなぜなのでしょうか?
(1) 治療費打ち切り判断の理由
むち打ちの場合、事故から3ヶ月程度で任意保険会社から治療費打切りの打診があることが多いようです。
これは、先にご説明した通り、一般的にむち打ちが回復するとされている期間が3~6ヶ月であるためです。
保険会社としては、「示談を早く済ませたい」「できるだけ治療費を抑えたい」という理由で、治療費の打ち切りを持ち掛けてきます。
また、これ以外にも理由があるケースもあります。具体的には、通院頻度が少ない場合です。
一般的には、週に2〜3回程度の通院があれば「症状が続いている」と判断できますが、1ヶ月に1度など通院頻度が少ない場合は「症状が回復している」と保険会社に勘違いされてしまうケースがあるのです。
「病院が遠い」、「忙しくて病院にいけない」など、事情はさまざまだと思いますが、治療を継続したい場合は、きちんと病院に通うことが大切です。
(2) 治療費打ち切りが打診された場合の対応
保険会社から治療費の打ち切りが打診されても、言われた通りに従うのはNGです。
というのも、治療費打ち切りは症状固定のタイミングに行われるためです。
症状固定とは、医学的に見てこれ以上回復しない状態を指し、これを診断するのは医師です。被害者が「まだ痛みがある」などの症状を訴えれば、症状固定とはならないケースもあります。
打ち切りを打診されてもまだ痛みがある場合は、医師に症状を伝え判断を仰ぎましょう。治療を続けたい場合はしっかりその旨も医師に伝え、保険会社にも同様に伝えるようにしましょう。
症状固定でないのであれば、仮に打ち切られてしまった場合でも、その後に必要となった治療費は示談の際に請求して、支払ってくれるよう交渉することが可能です。
それまでは、自費だと治療費が大きな負担となってしまうため、健康保険に切り替えて3割負担で治療を続けることがおすすめです。
3.症状固定後の後遺障害等級認定
むち打ちで症状固定となったら、後遺障害等級認定申請を検討する時期です。
後遺障害認定にて等級を獲得できれば、受け取れる賠償金の種類が増えるため、打ち切り後の治療費の負担もカバーすることもできます。
最後に、むち打ちと後遺障害等級認定について見ていきましょう。
(1) むち打ちの後遺障害等級認定とは
むち打ちが完治しない場合は、後遺障害等級認定を受けることで、「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」を受け取ることができます。
後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったことに対する精神的苦痛に対する慰謝料で、逸失利益とは、将来得られたであろう収入を保障するものです。
この2つの賠償金については、後遺障害等級認定を申請し、等級が認められることで初めて請求が可能となります。
[参考記事]
後遺障害申請のやり方|事前認定と被害者請求
むち打ちの場合は後遺障害認定が難しく、一般的に6ヶ月以上の通院期間が必要と言われています。そのため、症状が続く場合は通院を怠らないことが非常に重要です。
むち打ちの場合、後遺障害等級認定で認定される可能性がある等級は14級か12級となります(等級が認定されない「非該当」のケースも少なくありません。)。
後遺障害慰謝料としては、14級で32万円、12級で93万円が最低でも受け取れることになります(自賠責基準の場合)。
(2) 保険会社の提示額に納得がいかない場合
むち打ちで後遺障害等級認定を受けても、保険会社の提示した慰謝料額に納得できないことがあります。
「これだけの被害にあったのに少なすぎる」と感じた場合、保険会社の提示額にそのまま従う必要はありません。
保険会社から提示された慰謝料額は、増額することが可能なことがあります。
一般的に、後遺障害慰謝料に関しては、3つの基準により慰謝料額が計算されています。具体的には、自賠責基準、任意保険会社基準、弁護士基準(裁判基準)です。
また、後遺障害等級認定の場合は、等級ごとにそれぞれの額が決まっています。
自賠責基準はベースとなる基準ですが、最低限の保障をするための基準であるため、最も低額です。任意保険会社の基準ではこれよりも高くなりますが、弁護士基準よりは低いのが通常です。
弁護士基準では、14級で110万円、12級で290万円となるため、先述の自賠責基準よりも78万円〜197万円も高くなります。
もっとも、弁護士基準は、弁護士が代理人となった場合に適用できる基準であるため、被害者本人が弁護士基準で任意保険会社と交渉しても増額は期待できません。
慰謝料の大幅な増額を望む場合は、どうぞ弁護士にご依頼ください。
4.むち打ちで後遺障害等級認定を申請するなら弁護士に相談を
むち打ちは軽い怪我と考えられがちですが、治療が長引けば後遺障害となる可能性もある怪我です。
治療費をきちんと受け取り、将来的に後遺障害等級認定を受ける可能性も視野に入れつつ、症状が続く場合はきちんと通院を続けることが大切です。
半年以上完治しない場合は、後遺障害等級認定を検討しましょう。
その際、何か分からないことがあれば、専門家である弁護士にご相談いただくのが賢明です。
獲得できそうな等級のご説明から、申請のお手伝い、任意保険会社との交渉まで、泉総合法律事務所の弁護士がお引き受けいたします。
適正額の損害賠償金を受け取るために、皆様のご相談をお待ちしております。
-
2019年10月21日交通事故 後遺障害申請のやり方|事前認定と被害者請求
-
2020年1月22日交通事故 人身事故と物損事故(物件事故)の違い|切り替えはお早めに
-
2020年8月25日交通事故 高次脳機能障害の後遺障害|適切なMRI検査を!