「ギャンブルが原因の借金は自己破産できない」って本当?
競馬、競輪、競艇などの公営ギャンブルに加え、事実上のギャンブルであるパチンコやパチスロなど、実は日本はギャンブル大国です。
ギャンブル好きな人の中には「いつの間にか借金を抱えてしまった」「多重債務者になってしまった」という人もいるでしょう。
借金で困った人の救済措置として「債務整理」というものが存在します。
特に債務整理の1つである「自己破産」は、借金をゼロにすることができるため、メリットの大きい債務整理といえます。
しかし、ネットでは「ギャンブルが原因の借金は自己破産できない」という情報が飛び交っています。
結論から言うと「ギャンブルによる借金でも自己破産は可能」です。
ネットの噂と真逆の答えですが、それはどうしてなのでしょうか?
このコラムの目次
1.自己破産できる条件
自己破産を誰にでもわかる言葉で言い換えれば「借金をゼロにする手続」です。
しかし何のリスクもなくそういったことができるわけではありません。
自分が持つ一定以上の財産を処分してお金に換えて債権者への弁済に充てたうえで、それでも残った借金についてはゼロになる…という手順を踏みます。
裏を返せば一定以上の財産がなければ処分する財産そのものが存在しないため、何も処分しないで借金をゼロにすることができます。
しかし、財産の内容に関係なく、そもそも自己破産を始めるための条件というものが存在します。
自己破産は裁判所に申立てを行って手続を始めてもらう債務整理なのですが、ある条件を満たさなければ自己破産を始めてもらうことすらできないのです。
その条件は、「支払不能であること」です。
「支払不能」の意味は簡潔にいうと「抱えている債務の返済ができないこと」なのですが、単に借金の総額だけで「これは支払不能ですね」と裁判所が認めてくれるわけではありません。
極端な例でいえば、借金の額が1,000万円であっても、債務者の収入がものすごく多い場合は返済可能なことがあるでしょう。
また、債務者に収入がない場合でも、現金、不動産、有価証券、ブランド品など十分な財産がある場合は、やはり返済可能と判断できます。
反対に、借金の額が100万円程度でも、債務者が病気で働けずに財産も特に持っていないような場合は、支払不能と判断されることがあります。
つまり借金の額だけでなく、債務者の支払能力とのバランスで「支払不能」かどうかが判断されるのです。
ある程度ケースバイケースの判断となってしまうため、一般人には自分が支払不能なのかどうかわかりにくいかもしれません。
あくまでも目安ですが「借金を3~5年程度かけても返済できなさそうなら支払不能」と考えてください。
できれば弁護士に相談して、自分は支払不能に該当するかどうか、ひいては自己破産できるのかどうかを確認するとよいでしょう。
2. 免責不許可事由について
(1) 免責不許可事由とは何か
「支払不能」であることが認められれば、破産開始決定が出され、破産手続が進むことになります。
もっとも、個人の破産の場合は、財産の調査や配当の手続の他に、申立人の「免責」に関する調査が行われます。
「免責」とは「裁判所が借金をゼロにすると認めてくれること」くらいの意味合いです。
自己破産の目的は、免責を許可してもらうことと言っても過言ではないでしょう。
そして「免責不許可事由」とは、「借金をゼロにすることを許可できない理由」という意味で捉えてください。
免責不許可事由は複数存在し、簡潔にして列記すると以下のようになります。
- 債権者を害する目的で財産の隠匿や破壊などをした
- 借金で買った品物を安価で売り払って現金化するような換金行為をした
- 一部の債権者にのみ有利になるような返済をした
- 支払能力があるかのように偽ってお金を借りた
- 帳簿を隠したり帳簿に嘘を書いたりした
- 破産手続を妨害する、嘘をつく、その他手続に非協力的
- 7年以内に免責を受けていた
- ギャンブルや浪費で借金を重ねた
最後の「ギャンブルや浪費で借金を重ねた」が、この記事で問題となるポイントです。
(2) ギャンブルが原因の借金は免責不許可事由
自己破産はある意味借金で首が回らなくなった人の救済措置ですが、なぜギャンブルや浪費による借金は免責してもらえないのでしょうか?
免責は債務者にとってはありがたい制度ですが、債権者にとっては権利を大きく侵害されてしまう手続です。
そのような手続を軽々しく利用できては債権者を害することになります。
また、ギャンブルによる借金の免責を認めてしまえば、「ギャンブルで当たれば大儲け、はずれても自己破産すればいい」と考える人が出てくるかもしれません。
従って破産法では、ギャンブルによる借金では免責を許可しないことにしているのです。
なお、借金の全額がギャンブルによるものでなく、ギャンブルのせいで生活費が足りなくなってお金を借りた場合でも「ギャンブルが原因の借金」だと判断されてしまいます。
このように、ギャンブルが原因の場合は自己破産しても借金が帳消しにならないと法律で決まっているのですが、最初の方に「ギャンブルによる借金でも自己破産は可能」と述べました。
これは一体どういうことなのでしょうか?
3.裁量免責という制度
破産法には免責不許可事由がある一方で、「裁量免責」というものも認められています。
これは裁判官が諸般の事情を考慮して自己の裁量で免責を許可できるものです。
実際にギャンブルが原因の自己破産であっても、多くの場合は免責を認められています。
裁量免責には一律の基準は設けられていませんが、免責不許可事由があってもその程度が軽微なものである場合は裁量免責を受けられることが多いです。
裁量免責を得るには以下のようなことに気をつけましょう。
- 破産手続に対して誠実に協力する
- 裁判所に虚偽の事実を述べない
- 経済的に更生しようとする態度を見せる
- 特定の債務者にのみ有利となるような弁済をしない
とにかく真面目に自己破産手続を進めるようにすれば、結果的に免責許可が得られないことはほぼありません。
どのようにすればいいのか、具体的なことは弁護士に相談して確認してください。
自己破産に詳しい弁護士であれば、裁量免責を得るためのポイント教えてくれます。
4.ギャンブルによる借金でも自己破産するなら弁護士へ
ギャンブルは「免責不許可事由」の1つになっていますが、現実的には「裁量免責」によって多くのケースで借金を帳消しにできます。
「自分の借金はギャンブルによるものだから自己破産できない」と諦めないで、まずは弁護士に相談しましょう。
裁量免責が取れそうかどうかを判断してくれますし、仮に難しい場合でも、自己破産以外の解決方法を考えてくれるでしょう。
自分で判断しないで、弁護士に相談して事態の打開を図ることをお勧めします。
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