債務整理

個人再生で車を残すことはできる?

もし「このままでは借金を返せそうにない」という状態になったときは、債務整理を検討する必要があります。

債務整理の手段の1つに「個人再生」というものがあります。
大まかに言えば、裁判所で手続をして借金の額を8〜9割カットして貰い、残りの借金については毎月少しずつ、原則3年をかけて分割返済していくのが「個人再生」です。

ここで気になるであろうことが、「個人再生をすると自分の財産は処分されるのか?」ということです。

他の債務整理方法に「自己破産」がありますが、こちらは、借金全体の免除を受けられる一方で、破産した時点での一定以上の保有財産が処分・配当の対象になってしまうというデメリットがあります。。
特に問題となるのが「マイホーム」と「マイカー」です。

ここでは、マイカー(自動車)に焦点を当てて、個人再生が自分の車に及ぼす影響を紹介していきます。

1.個人再生と車の関係

結論から言えば、個人再生では基本的に財産を処分する必要はありません。

ただし、ローンが残っているものについては例外があります。
つまり住宅ローンやマイカーローンが残っている場合は「危ない」ということです。

詳しく見ていきましょう。

車については、「ローンを完済した車」「ローン支払中の車」に分けて考える必要があります。

(1) ローンを完済した車

既にローンを払い終わった車には、基本的に「債権者」や「債務」というものが存在しません。

個人再生は今ある債務を整理する手続なので、既に債務がないものは整理されません。
従って、この場合、マイカーを問題なく手元に残すことが出来ます

問題があるとすれば、車の価値次第では、「清算価値」が上がることでしょう。

「清算価値」とは、簡単に言えば「自分の財産を全てお金に換えたときの金額」、もっとざっくり言えば「仮に、自己破産を選択していたら、債権者への配当に回っていた財産の見込み額」のことです。

個人再生の手続後は、裁判所が認めた再生計画に従って、毎月少しずつ借金を返済することになりますが、場合によっては「清算価値」を基準として再生計画上の返済額が決められる可能性があります(これは、個人再生には、「再生計画上の返済総額は、決して清算価値を下回ってはならない」というルールが存在するためです)。

そのため、マイカーの価値があまりにも高い場合は清算価値が上がってしまうので、個人再生後の支払額が上がり、生活に影響が出るかもしれません。

(2) ローン支払中の場合

まだローンを支払っている真っ最中の場合、ローンの債権者が自動車を回収してしまうおそれがあります。

通常、カーローンを組む際は、ローン完済までは債権者が車の所有権を持っているケースが多いため(これを所有権留保と言います)、債権者は所有権に基づいて合法的に車を回収することが出来ます。

ローン完済前の車の所有権の扱いについては、ローンの契約書などに記載してあるはずなので、気になる人は必ず確認して下さい(車が所有権留保の状態にあるか否かは、車検証の所有者の欄の名義をチェックすることでも確認出来ます)。

もし、ローン支払中の車の所有権が、債権者ではなく既に債務者にある場合は、車の回収を免れることが出来ます。

【持ち家は「住宅ローン特則」で残せる】
住宅ローン支払中の持ち家があるときに個人再生をすると、住宅ローンの債権者は抵当権を実行して債権の回収を図ります。
抵当権が実行されると持ち家を失うことになりますが、個人再生には「住宅ローン特則」というものがあるため、これを使えば持ち家を処分されずに済みます。
つまり、住宅ローンを支払い続けることを条件として、持ち家を手元に残せるのが「住宅ローン特則」という制度なのです。
ただし、この特則は、あくまで住宅ローンに限ったものであり、カーローンについては、このような特則は法律上設けられていないため、ローンが残っていて、債権者に所有権が留保された車を持った状態で個人再生をすると、車の引き揚げのリスクが生じることになります。

2.ローンがある車を残しておく方法は?

もし、ローン支払中で、車の所有権がローン会社にある場合、どうすれば車を残すことが出来るのでしょうか?

(1) 親族にローンを支払ってもらう

ローンを完済すれば問題はなくなるのですが、個人再生では、債務者が特定の債権者のみを特別に扱うことは禁止されています。
どうしても車を残したいという個人的な事情があったとしても、他の債権者を差し置いてローン会社にだけお金を払ってはいけないのです(このような不公平な返済を偏頗弁済(へんぱべんさい)と言います)。

そこで有効なのが、「自分の代わりに親族にお金を払ってもらい、ローン残債を完済する」という方法であり、これを第三者弁済と言います。
この場合、代わりにお金を払ってくれる親族が必要ですが、これならマイカーを手放さずに済みます(ローンが全額返済されるなら、債権者としても所有権留保を実行する理由がなくなります)。

ただし、配偶者や同居の家族のような、債務者と家計が同一の家族に第三者弁済を依頼した場合は、「結局、債務者が支払ったのと同じことではないか」、「返済の名義だけ家族に借りて、実際の返済原資は債務者本人が出したものではないか」などといった疑念を裁判所に持たれるリスクがあります。

第三者弁済は、形式的(返済の名義)のみならず実質的(返済原資の負担)にも、第三者による弁済であることが求められるのです。

また、第三者弁済して貰ったお金については、個人再生手続上は、通常の立替金として処理されるものなので、「第三者弁済してくれた家族にだけは全額を返す」ということは許されません。そのため、第三者弁済を依頼する際に、きちんと説明をしておかないと、家族間のトラブルに発展しかねません。

なお、親族にローンを引き継いで貰う(引き継いだ親族には、もとの契約条件に従って、残りのローンを分割返済して貰う)という方法もありますが、こちらは親族に一定以上の収入が必要ですし、ローン会社の許可も要ります。
そもそも、このような処理をローン会社が断ることもあるので、ご注意下さい。

(2) 別除権協定を使う

別除権協定とは、ローン会社との間で「ローンは必ず支払いますので、車は回収しないで下さい」という取り決めをすることです。

勝手にこれを行なうと、先に述べた「特定の債権者のみを特別に扱うことは禁止されている」という規定に触れてしまいますが、裁判所の許可を得れば問題ありません。

ただし、別除権協定を使えるのは(裁判所が別除権協定を許可してくれるのは)ごく限られた人だと考えてください。
例えば、個人タクシーの運転手など、車を使うことで直接的に収入を得ている人でなければ、別除権協定を認めて貰える可能性は非常に低いです。

これに対し、「周囲に公共交通機関がないので、車がないと買い物などが不便」という理由では、裁判所の許可が出ないケースが多いです。

勿論、住んでいる地域によっては、車なしでは本当に生活が成り立たない、ということはあり得るでしょうから、裁判所によって運用が異なる可能性はありますが、少なくとも都市部の裁判所では、日常生活上の必要性を理由とした許可のハードルは、とても高いと言わざるを得ないでしょう。

念のため弁護士に相談してみて、別除権協定が使える見込みがある場合は本格的に検討してみても良いかもしれません。

3.ローン支払中の車がある場合の個人再生は弁護士へ

ローンを完済した車はともかく、ローン支払中の車については、個人再生をすると、留保された所有権に基づき、ローン会社が車を引き揚げ・回収してしまう可能性が高いです。

しかし、車を守ろうとしてうかつにローンを支払うと、今度は個人再生のルール(債権者平等)に違反してしまい、肝心の個人再生が上手くいかなくなってしまうかも知れません。

こういった場合は、ぜひ弁護士に相談して下さい。
弁護士は個々の相談者の事情に応じて最善の解決方法を考えてくれます。

そもそも個人再生は、専門家の助力なしでは成功が難しい債務整理です。
個人再生をしようと思ったら、まず弁護士に相談しましょう。

裁判所とのやりとりやトラブルが起きたときの対処までしてくれるので、結果的に早く・効率良く個人再生を終わらせることが出来ます。

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