個人再生のメリットとデメリットは?
「個人再生ならマイホームを処分しなくて済む」「任意整理よりも個人再生の方が借金を効果的に解決できる」
このような情報を知って、個人再生を考えている人もいるかと思います。
しかし、そもそも個人再生とはどのような効果があるのか、そして、具体的にどのようなメリットとデメリットがあるのか、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
ここでは、個人再生の概要と、メリット・デメリットを紹介していきます。
借金でお困りの方や、既に個人再生を検討している方は参考にしてください。
このコラムの目次
1.個人再生とは
個人再生は、借金を基本的に5分の1~10分の1まで減額し、その減額した借金を3年程度かけて毎月少しずつ返済していく債務整理です。
裁判所に「再生計画」という返済計画のようなものを提出し、認めてもらわなければなりません。
その後の弁済義務は残りますが、借金の減額率が大きいうえに、「住宅ローン特則」と呼ばれる制度を使えば、住宅ローン支払い中のマイホームを手元に残したまま債務整理ができます。
個人再生には、以下の2パターンがあります。
(1) 小規模個人再生
個人再生の基本となるパターンです。
小規模個人再生をするには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 債務総額が5,000万円以下(住宅ローン特則を利用する場合、住宅ローンは含まず、利息制限法による引き直し計算後の金額)
- 再生計画に沿った弁済ができるだけの継続的または反復的な収入が将来にわたってあること
- 個人再生に不同意の債権者が半数に満たず,かつ,不同意の債権者の債権額が債権総額の2分の1を超えないこと
(2) 給与所得者等再生
小規模個人再生ができないとき、例えば債権者の過半数が小規模個人再生に反対している場合などに選ばれるのが「給与所得者等再生」です。
以下の条件をすべて満たす場合に利用できます。
- 債務総額が5,000万円以下(同上)
- 再生計画に沿った弁済ができるだけの継続的または反復的な収入が将来にわたってあり、その変動幅が少ないこと
- 過去7年以内に自己破産手続の免責、給与所得者等再生における再生計画の認可決定、個人再生手続のハードシップ免責を受けていないこと
最後の「ハードシップ免責」とは個人再生後に失職や事故など、本人の責任によらない事情で借金を返せなくなった場合に、一定の要件のもとで残債務を帳消しにする制度です。
給与所得者等再生は、小規模個人再生に比べて最終的な返済額が高くなることが多いため、ほとんどの人がまずは小規模個人再生を選ぶでしょう。
2.個人再生のメリット
個人再生には、以下のメリットがあります。
(1) 借金を大きく減らせる
既に述べたように、個人再生は借金を大きく減らすことができます。
減額については、具体的に以下のような決まりがあります。
- 借金総額100万円未満:減額なし
- 100万円以上500万円未満:100万円まで
- 500万円以上1,500万円未満:借金総額の5分の1まで
- 1,500万円以上3,000万円以下:300万円まで
- 3,000万円以上5,000万円以下:借金総額の10分の1まで
借金の減額については他にも様々な決まりがあるので、最終的な返済額がこれより高くなることもありますが、一般的には任意整理よりも減額される可能性が高いです。
(2) 財産を処分しなくて済む
自己破産をすると、一定以上の財産を処分しなければなりません。
しかし個人再生の場合、基本的に財産を処分しなくても大丈夫です。
ローン支払い中の自動車など、所有権が債権者側にある物品は回収されてしまいますが、そうでないものは手元に残すことができます。
(3) 住宅ローン特則でマイホームを手放さずに済む
上記のように、ローン支払い中のものは個人再生によって失う可能性がありますが、住宅ローンに関しては特例があります。
住宅ローンを個人再生の対象から外して従来通り支払うことを条件として、マイホームに住み続けることができるのです。
特則を利用するための様々な条件はありますし、手続は複雑になりますが、弁護士に依頼すればしっかり対応してもらえます。
(4) 資格制限や引っ越しの制限などがない
自己破産の場合は、一定期間就業できない職業があったり、引っ越しや旅行にある程度の制限がかかったりしてしまいます。
しかし個人再生の場合、そういった制限がありません。
家族へ与える影響も最低限のものになるでしょう。
3.個人再生のデメリット
メリットがある一方で、個人再生にはデメリットもあります。
(1) 手続が複雑
個人再生は、他の債務整理と比べて手続が非常に複雑です。
法的知識のない一般人が独学で行うのは難しいので、弁護士に依頼する必要があります。
(2) 制度を利用する条件が厳しい
個人再生を利用するには、「再生計画」という返済計画のようなものを守って返済していけるだけの定期的な収入が必要です。
正社員だけでなくアルバイトやパートであっても、定期的な収入があれば問題ないことが多いですが、単発バイトを渡り歩いているような人は個人再生できない可能性が高いです。
また、年齢が原因で年金を受給している人は定期的な収入があると認められます。しかし、障害が原因の年金の場合は、障害が治って年金の受給を受けられなくなる可能性があるので、ケース毎に個別に判断されます。
さらに、小規模個人再生にも給与所得者等再生にもそれぞれ利用できる条件を満たさなければならないので、下手をすると裁判所が個人再生の開始を認めてくれません。
(3) 返済義務が残る
自己破産をすると借金をゼロにできますが、個人再生の場合は減額されたとはいえ借金を返し続けなければなりません。
個人再生前に比べれば生活は楽になりますが、それでも不慮の事態で収入が減って生活が苦しくなる可能性はゼロではありません。
特に住宅ローン特則を使った場合、住宅ローンの支払いはそのまま継続しなければならないので、返済額や個人再生後の事情によっては支払いが難しくなることもありえます。
(4) ブラックリストや官報に載る
個人再生をすると、その情報が銀行や貸金業者、クレジットカード会社などの間で共有されます。
お金を借りようとしたときにはその情報を照会されてしまうため、「個人再生した人=支払能力に問題がある人」という扱いを受けて、ローンや融資、クレジットカードの審査に落ちてしまいます。
これを俗に「ブラックリストに載った」といいますが、この状態から解放されるには5年から10年待つ必要があります。
最も、これは債務整理全般に言えるデメリットです。
また、国が発行する機関紙である「官報」にも、個人再生をすると氏名や住所が掲載されてしまいます。
ほとんどの人は官報を見ないため実質的な不都合はない可能性が高いですが、官報を毎日チェックするような仕事の人が知り合いにいる場合は、注意が必要かもしれません。
(5) 保証人に迷惑がかかる
個人再生をすると、債権者は保証人に支払いを請求する可能性が高いです。
事前の連絡は必須ですし、何らかの対策をしておかなければ、保証人に大きな迷惑がかかってしまいます。
4.個人再生するなら弁護士への依頼は必須
個人再生には、借金を減額してマイホームを手元に残せるなどの大きなメリットがありますが、手続が難しいなどのデメリットも存在します。
しかし、弁護士に依頼すれば大半の手続を代行してもらえますし、デメリットについても個別のケースに合わせた注意点を教えてもらえます。
自分1人で個人再生をするのは無理があります。正しい知識とスキルを持った弁護士に依頼して、一刻も早く借金問題を解決しましょう。
ご相談は、個人再生をはじめとする債務整理の実績豊富な泉総合法律事務所に、ぜひご来所ください。
-
2019年9月27日債務整理 個人再生をするための条件とは?
-
2019年10月17日債務整理 自己破産で「破産管財人」がつくケースとは?
-
2019年12月4日債務整理 個人再生で必要な家計簿の書き方